不動産売買契約で注意するポイント|手付金・契約不適合責任も解説
不動産の売買契約は、人生の中でも数えるほどしか経験しない、大きなお金が動く重要な契約です。しかし、実際に契約書を目の前にすると、専門用語が並んでいて「何を確認すればいいのか分からない」と不安になる方がほとんどではないでしょうか。
この記事では、不動産売買契約の基本的な流れから、特にトラブルになりやすい「手付金」「重要事項説明」「契約不適合責任」について、初めて不動産取引をする方にも分かりやすいように、具体例を交えながら解説していきます。
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もくじ
売買契約とは

不動産売買契約の基本的な意味
不動産売買契約とは、土地や建物(マンション・一戸建てなど)を「売る人(売主)」と「買う人(買主)」との間で、「この不動産をいくらで売買します」という約束を、法的な効力を持つ形で取り交わすことです。
たとえるなら、フリマアプリで「この商品を1万円で売ります」「買います」とやり取りするのと似ていますが、不動産の場合は金額が数百万円〜数千万円と非常に大きく、後から「やっぱりやめたい」となった場合の影響も大きいため、口約束ではなく、詳細な契約書を作成して取り交わすことが一般的です。
口約束だけでは危険な理由
法律上、実は不動産の売買契約自体は口約束(口頭の合意)だけでも成立するとされています。しかし、実務上は必ず書面(契約書)を作成します。理由は主に以下の3つです。
- 〇 後から「言った・言わない」のトラブルを防ぐため
- 〇 数千万円という高額な取引のため、内容を明確に残しておく必要があるため
- 〇 住宅ローンを利用する場合、金融機関に契約書の提出が求められるため
つまり契約書は、売主・買主双方を守るための「約束の記録」であり、非常に重要な書類だといえます。
契約書に記載される主な項目
不動産売買契約書には、一般的に次のような項目が記載されます。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 売買代金 | 不動産の価格、支払方法、支払時期 |
| 手付金 | 契約時に支払う金額とその性質 |
| 引き渡し時期 | 物件を実際に受け渡す予定日 |
| 所有権移転の時期 | 名義が買主に変わるタイミング |
| 契約解除の条件 | ローン特約、手付解除などの条件 |
| 契約不適合責任 | 引き渡し後に不具合が見つかった場合の対応 |
| 公租公課の精算 | 固定資産税・都市計画税の日割り精算方法 |
これらの項目は、後ほど詳しく説明する「手付金」や「契約不適合責任」とも密接に関わってくるため、契約書を受け取ったら隅々まで目を通すことが大切です。
契約当日の流れ
契約当日は多くの書類にサインをすることになり、初めての方は緊張してしまいがちです。あらかじめ流れを知っておくことで、落ち着いて対応できるようになります。
契約当日に必要な持ち物
一般的に、契約当日には以下のものを準備しておく必要があります。不動産会社から事前に案内があるはずですが、念のため一覧にまとめます。
- 〇 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 〇 印鑑(実印が必要な場合があります)
- 〇 印鑑証明書(売主・代理契約など、取引内容により必要)
- 〇 手付金(現金または振込の控え)
- 〇 収入印紙代(契約書に貼付する印紙代)
- 〇 仲介手数料の一部(契約時に半金を支払うケースがある)
持ち物は不動産会社や取引の内容によって異なる場合があるため、必ず事前に担当者へ確認しておきましょう。
当日の手続きの順番
契約当日は、おおむね以下の順番で進みます。
| 順番 | 手続きの内容 | 担当者 |
|---|---|---|
| 1 | 重要事項説明 | 宅地建物取引士 |
| 2 | 売買契約書の読み合わせ | 不動産会社の担当者 |
| 3 | 契約内容についての質疑応答 | 売主・買主・担当者 |
| 4 | 契約書への署名・捺印 | 売主・買主 |
| 5 | 手付金の授受 | 売主・買主 |
| 6 | 今後のスケジュールの確認 | 不動産会社の担当者 |
このように、契約書に署名する「前」に、必ず「重要事項説明」という手続きが行われます。これは法律で義務付けられた非常に重要なプロセスであり、この記事の後半で詳しく解説します。
契約にかかる時間の目安
契約当日は、重要事項説明・契約書の読み合わせ・質疑応答などを含めると、一般的に1時間半〜2時間程度かかることが多いといわれています。ただし、これは物件の内容や契約書のボリュームによって前後しますので、あくまで目安として捉えてください。
「意外と時間がかかるものなんだな」と心づもりをしておくと、当日焦らずに済みます。分からないことがあれば、その場で必ず質問し、曖昧なまま署名しないことが何より大切です。
手付金について

手付金とは何か(保証金との違い)
手付金とは、売買契約を結ぶ際に、買主が売主に対して先に支払うお金のことです。「保証金」や「予約金」と混同されがちですが、それぞれ意味合いは異なります。
保証金は、賃貸契約などで、家賃の未払いや物件の損傷などに備えて預けておくお金という性質があります。一方、不動産売買で支払われる手付金は、特別な定めがない限り「解約手付」として扱われるのが一般的です。
一定の条件を満たす場合、買主は支払った手付金を放棄し、売主は受け取った手付金の倍額を返すことで、契約を解除できます。そのため、単なる予約金よりも重要な意味を持つお金です。詳しくは、後述する「手付解除」の項目で説明します。
なお、手付金は売買代金の一部に充当されるのが一般的で、最終的な残代金の支払い時には、支払済みの手付金を差し引いた金額を支払います。
手付金の相場・金額の決め方
手付金の金額に法律上の明確な下限・上限が定められているわけではなく、売主・買主の合意によって決まります。実務上は、売買代金の5%〜10%程度とされるケースが多く見られますが、これは物件や取引によって異なるため、あくまで「よくある目安」として捉えてください。
なお、売主が不動産会社(宅地建物取引業者)である場合には、宅地建物取引業法により、手付金の額が売買代金の20%を超えてはならないという上限が法律で定められています(宅地建物取引業法第39条)。個人間の売買ではこの規制は適用されませんが、不動産会社が売主となる新築マンションなどの取引では、この上限が意識されます。
| 手付金額の目安 | 特徴 |
|---|---|
| 売買代金の5%程度 | 比較的負担が少ない設定 |
| 売買代金の10%程度 | 実務上よく見られる水準 |
| 売買代金の20%超 | 売主が宅建業者の場合は法律上禁止 |
※上記はあくまで一般的な目安であり、実際の金額は契約ごとの交渉によって決まります。個別の契約内容については、必ず契約書および重要事項説明書の記載を確認してください。
手付解除ができる期限と注意点
手付金の最大の特徴は「手付解除」という仕組みにあります。これは、契約後であっても、一定の条件を満たせば契約を白紙に戻せる(キャンセルできる)というルールです。
具体的には、民法上、以下のようなルールになっています。
- 〇 買主側から解除する場合:支払った手付金を放棄する(=手付金は返ってこない。実務では「手付流し」と呼ばれることもあります)
- 〇 売主側から解除する場合:受け取った手付金の倍額を買主に支払う(=手付金を返した上で、さらに同額を支払う。実務では「手付倍返し」と呼ばれることもあります)
ただし、手付解除ができるのは、原則として相手方が契約の履行に着手する前までです。何が「履行の着手」に当たるかは、契約内容や具体的な行為によって判断されます。
多くの契約書では、「手付解除は〇年〇月〇日まで」というように、具体的な期限(手付解除期日)を明記します。この期日を過ぎると、正当な理由なく契約をキャンセルすることが非常に難しくなるため、必ず契約書で期日を確認しておきましょう。
手付金が戻ってこないケース
手付金が戻ってこない代表的なケースを整理すると、以下のようになります。
| ケース | 手付金の扱い |
|---|---|
| 買主の都合で手付解除期日内に解約 | 買主は手付金を放棄(戻らない) |
| 売主の都合で手付解除期日内に解約 | 買主は手付金+同額を受け取れる |
| 手付解除期日を過ぎてから買主都合で解約 | 手付金放棄に加え、違約金が発生する場合がある |
| 住宅ローンが否認された(ローン特約がある場合) | 手付金は全額返還されるのが一般的 |
特に注意したいのが「ローン特約」です。住宅ローンを利用して購入する場合、多くの契約書には「決められた期日までに住宅ローンの承認が下りなかった場合は、契約を白紙解除できる」という特約が盛り込まれます。この特約があれば、ローン審査に落ちてしまった場合でも、手付金は返還されるのが一般的です。ただし、特約の内容や期日は契約書によって異なるため、必ず自分の契約書に「ローン特約」が明記されているか、その条件はどうなっているかを確認してください。
重要事項説明とは

重要事項説明の目的と法的な位置づけ
重要事項説明とは、不動産を購入する前に、その物件に関する重要な情報を買主に対して説明する手続きのことです。これは宅地建物取引業法という法律で義務付けられている、非常に重要な制度です。
たとえるなら、家電製品を購入する前に「取扱説明書」や「注意事項」を必ず確認するようなものです。ただ、不動産の場合はその内容がより複雑で、法律的な制限や設備の状況など、専門的な情報が多く含まれます。そのため、素人が自己判断で内容を理解するのではなく、専門知識を持った国家資格者が説明することが法律で義務付けられているのです。
重要事項説明は、原則として契約書に署名・捺印する「前」に行われなければなりません。これは、買主が内容を十分に理解し、納得した上で契約するかどうかを判断できるようにするためです。
誰が説明するのか(宅地建物取引士の役割)
重要事項説明は、誰でも行えるわけではありません。「宅地建物取引士(たくちたてものとりひきし)」という国家資格を持つ人だけが行うことができます。
宅地建物取引士は、説明の際に以下のことを行う義務があります。
- 〇 買主に対して、宅地建物取引士証(資格を証明するカード)を提示する
- 〇 重要事項説明書を交付または電磁的方法で提供する
- 〇 その内容に基づき、買主が理解できるように説明する
もし説明の際に宅地建物取引士証の提示がなかったり、書面だけ渡されて説明が省略されたりした場合は、法律違反にあたる可能性があります。少しでも疑問に感じた場合は、その場で「宅地建物取引士証を見せてください」と伝えても問題ありません。
重要事項説明書でチェックすべき主な項目
重要事項説明書には非常に多くの情報が記載されていますが、特に初心者の方が押さえておきたい主な項目を以下にまとめます。
| チェック項目 | 確認すべき内容の例 |
|---|---|
| 物件の権利関係 | 登記簿上の所有者、抵当権(住宅ローンの担保)の有無 |
| 法令上の制限 | 建築できる建物の種類・大きさに関する制限(都市計画法、建築基準法など) |
| インフラの状況 | 電気・水道・ガス・下水道の整備状況 |
| 私道負担 | 敷地に接する道路が私有地の場合、その扱いや費用負担 |
| 建物の状況 | 建物状況調査の実施の有無・結果概要、 物件状況等報告書に記載された雨漏りやシロアリ被害など |
| 管理関係(マンションの場合) | 管理費・修繕積立金の金額、滞納の有無、管理組合の状況 |
| 契約解除に関する事項 | 手付解除、ローン特約、違約金の定めなど |
これらの項目のうち、特に「抵当権の有無」「私道負担」「修繕積立金の滞納」は、後から思わぬ負担につながりやすいポイントです。分からない用語が出てきたら、その場で必ず質問しましょう。
説明を受けるタイミングの注意点
重要事項説明は、法律上「契約締結前」に行われることが義務付けられていますが、実務上は「契約当日に、契約書の署名の直前」に行われることも少なくありません。
しかし、これでは内容をじっくり検討する時間がなく、「その場の雰囲気でよく分からないまま署名してしまった」という状況になりかねません。可能であれば、以下のような対応を不動産会社に相談することをおすすめします。
- 〇 重要事項説明書を「契約日より前」に事前に送ってもらい、目を通しておく
- 〇 分からない用語や気になる点を、事前にリストアップしておく
- 〇 当日は説明を聞きながら、契約書とあわせて再確認する
不動産会社によっては、契約日の数日前に重要事項説明書を送付し、事前確認の時間を設けてくれるところもあります。遠慮せずに「事前に見せてほしい」と伝えることが、後悔しない契約の第一歩です。
契約不適合責任とは
契約不適合責任の基本的な考え方(旧・瑕疵担保責任との違い)
契約不適合責任とは、購入した不動産が「契約書に書かれていた内容」と異なっていた場合に、売主が負う責任のことです。2020年の民法改正により、それまでの「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という制度が見直され、「契約不適合責任」という名称・考え方に変わりました。
分かりやすくたとえると、通販で「新品・傷なし」と書かれた商品を購入したのに、届いた商品に大きな傷があった場合、「契約内容と違うので、修理や返金をしてほしい」と言えるのと同じような考え方です。
以前の「瑕疵担保責任」は、「隠れた欠陥(買主が気づけなかった欠陥)」があった場合に限定して責任を問う考え方でした。これに対して「契約不適合責任」は、「契約の内容(契約書や重要事項説明書に書かれた内容)と実際の物件が異なっているかどうか」という点に着目する考え方に変わっています。この違いは法律の専門的な論点でもあるため、詳細は法務省の民法改正に関する公式情報などもあわせてご確認ください。
契約不適合責任が問題になる具体例
契約不適合責任が問題となる代表的なケースには、次のようなものがあります。
- 〇 雨漏りがあることを知らされずに購入したが、引き渡し後に発覚した
- 〇 シロアリ被害があったにもかかわらず、説明されていなかった
- 〇 給排水管に故障があり、契約書に記載がなかった
- 〇 土地の地中に、以前の建物の基礎や埋設物(ごみなど)が埋まっていた
- 〇 建物の耐震性能が、契約書に記載された内容と異なっていた
これらのケースに共通するのは、「契約書や重要事項説明書に書かれていた内容」と「実際の状態」が異なっているという点です。逆にいえば、契約書にあらかじめ「雨漏りあり」と明記されていた場合は、契約不適合責任を問うことは難しくなります。だからこそ、契約前の重要事項説明・契約書の確認が非常に重要なのです。
責任を追及できる期間と方法
契約不適合責任のうち、目的物の種類または品質に関する不適合については、買主は「不適合を知った時から1年以内」に、その旨を売主に通知する必要があると民法で定められています(民法第566条)。この期間を過ぎると、原則として責任を追及することが難しくなります。
買主が売主に対して請求できる主な内容は、以下の通りです。
| 請求できる内容 | 概要 |
|---|---|
| 追完請求 | 修理や補修など、契約内容通りの状態にすることを求める |
| 代金減額請求 | 修補が難しい場合などに、代金の減額を求める |
| 損害賠償請求 | 契約不適合によって生じた損害の賠償を求める |
| 契約解除 | 契約の目的を達成できない場合、契約自体を解除する |
これらの請求権は非常に専門的な内容であり、実際にトラブルが発生した場合は、自己判断せずに弁護士や、宅地建物取引士など専門家に早めに相談することを強くおすすめします。
契約不適合責任を免責・軽減する特約への注意
不動産の売買契約、特に個人が売主となる中古住宅の取引では、「契約不適合責任を負わない」あるいは「一定の期間・範囲に限定する」という特約が付けられることが少なくありません。これを「契約不適合責任の免責特約」と呼びます。
これは違法なものではなく、民法上は当事者の合意があれば有効とされています。特に個人間の売買では、「引き渡し後3か月以内に発見された雨漏り・シロアリ被害に限り責任を負う」というように、責任の範囲や期間を限定する特約がよく見られます。
ただし、注意したい点として、売主が「知っていながら黙っていた欠陥(悪意で告げなかった事実)」については、免責特約があっても責任を免れないとされています。
また、売主が宅地建物取引業者(不動産会社)である場合には、宅地建物取引業法により、買主に不利になりすぎる特約(引き渡しから2年未満に制限するなど)は原則として無効とされる、といった買主保護のルールも定められています(宅地建物取引業法第40条)。
このように、契約不適合責任に関する特約は物件や売主の属性によって大きく異なるため、契約書に「契約不適合責任」に関する条項がある場合は、その範囲・期間を必ず確認し、不明点があれば契約前に必ず質問するようにしましょう。
まとめ
売買契約で失敗しないためのチェックリスト

最後に、この記事で解説した内容を踏まえて、不動産売買契約で失敗しないためのチェックリストをまとめます。
- 〇 契約書は「口約束」ではなく必ず書面で確認し、隅々まで目を通す
- 〇 契約当日の流れ(重要事項説明→契約書読み合わせ→署名捺印→手付金支払い)を事前に把握しておく
- 〇 手付金の金額と「手付解除ができる期日」を必ず契約書で確認する
- 〇 住宅ローンを利用する場合は「ローン特約」の有無と条件を確認する
- 〇 重要事項説明書は可能な限り事前に受け取り、分からない用語はその場で質問する
- 〇 宅地建物取引士証の提示があるか、口頭での説明が省略されていないか確認する
- 〇 契約不適合責任に関する特約(免責や期間の制限)の内容を必ず確認する
- 〇 不明点や不安な点は、署名する前に必ず解消しておく
不安な場合
不動産売買契約は高額な取引であり、専門用語も多いため、不安に感じるのは自然なことです。少しでも疑問や不安がある場合は、決して自己判断で契約を進めず、すまる株式会社までお気軽にご相談ください。
不動産売買契約は、一度署名をしてしまうと後から取り消すことが難しい重要な契約です。この記事で紹介したポイントを参考に、契約書や重要事項説明書の内容をしっかり確認し、納得したうえで大切な取引を進めていただければと思います。
今回の内容を踏まえて、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
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